L0VE DRUNK

ロマンス小説の感想

戯れの夜に惑わされ リズ・カーライル 他

戯れの夜に惑わされ (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション) The Devil to Pay (English Edition)

 

ヒロインは女義賊のブラック・エンジェル。  昼間は家庭教師をしている貞淑な未亡人で、夜には放蕩貴族を懲らしめるブラック・エンジェルとして暗躍しているヒロイン。この設定だけ見ると、ちょっとマンガちっくでバカっぽい話のように思えるけど、流石はL・カーライル、人物造詣が深く、ストーリーもこの設定にしてはそれほど荒唐無稽なところもなく、引き込まれました。この作者のいつものスタイルで、各章毎に見出しがついていて、文章も独特の雰囲気があると思います。"同衾する"とか、最近はあまり見ない表現よね。元の英文がそいういう感じなのか、この翻訳者さんの訳語の選択が独特なのかわかりませんが、味のある文章だと思います。  ヒーローは自堕落な生活を送っている飲んだくれの侯爵ですが、そうなったのも若いときの不幸な出来事のためで、世を拗ねた態度の奥で罪悪感に苦しむ心が垣間見られるのが切ないです。その不運な事故も元はと言えばしょうもないことがきっかけだから余計にやるせない。そんな彼が、(実は同一人物の)近所に住む上品な未亡人のレディと娼婦に化けた女義賊という、全く違うタイプの女性2人に惹かれて混乱するのが読みどころです。未亡人には本気で恋をして、ブラック・エンジェルに対しては欲望を抑えられないという対比が面白いです。ラブシーンもエンジェルが相手の時はとにかく強引に奪うような感じで、未亡人が相手だと情熱的ではあるけれどもっと優しくて・・・。  愛人ですら愛想を尽かしてすぐに出て行ってしまうような、ろくでなしの放蕩者だったヒーローが、ヒロインに出会って本気で恋に落ちるというのが、よくあるパターンだけど素敵でした。ヒロインも、ただ正義感に駆られて女義賊になったわけではなく、そこには自分の生い立ちも絡んだもう少し複雑な心理があり、キャラクターに深みがあります。ブラック・エンジェルのトレードマークのタトゥーがストーリーの意外なアクセントになっていて、そういうところも上手いなあと思いました。この作家さん、未邦訳の作品がまだたくさんあるから、どんどん出してほしいなあ。  

 

 

夜明けの夢のなかで (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション) Shadow Woman (English Edition)

 

同時発売のリンダ・ハワード「夜明けの夢のなかで」も読みましたが、なかなか面白かったです。こういう追い詰められる系のサスペンスって好きなのよね。短めにまとまっていて、まどろっこしい説明は少な目なのでスピード感抜群です。顔を変えられ記憶の一部も消去されたヒロインと一緒に恐怖とパニックを体験しながら読むのが良いと思います。細かいところまで理詰めで追求して読むと説明不足に感じる部分もあるかと思いますが、私はこの疾走感が好きなので、これで良いのではないかと思います。サスペンス色の濃いストーリーなので、ネタバレになるといけないからあまり詳しい感想は書かずに、このへんにしておきます。