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ロマンス小説の感想

初恋と追憶の肖像画 エリザベス・ホイト

初恋と追憶の肖像画 (ライムブックス) To Desire a Devil (The Legend of the Four Soldiers Book 4) (English Edition)

 

戦死したと思われていたのに生きて帰還したヒーロー。  シリーズ最終話にふさわしい感動的なストーリーで、文句なしの出来栄えでした。この作者の描くヒーローは変わり者が多いですが、今作も一癖も二癖もある個性的なヒーローで、味のあるキャラクターでした。ロマンス小説でも軍人のPTSDモノはよくありますが、彼がくぐり抜けた状況はかなり複雑で、ヒロインに少しずつ打ち明ける体験談が興味深く、すべてが明らかになった時には彼のやるせない気持ちに共感できることでしょう。戦場で死んだと思われて仲間に置き去りにされたことを恨んでいたり、爵位と財産を取り戻すことだけに固執していたり、高潔とは言えない部分もあるけれど、そういう人間味のあるキャラクターだからこそストーリーがリアルに感じられるのだと思います。原住民の捕虜にされ、文明とはかけ離れた世界での生活を余儀なくされていたため、ヒロインに対しても荒々しい所有欲を発揮したりするのでゾクゾクさせられます。  ヒロインは本当に優しく友達思いで、彼女の幼馴染とのエピソードは涙なくしては読めません。自然体でわざとらしいところがなく、ひねくれ者のヒーローも恋せずにはいられない可愛い女性です。ヒーローへの想いがとても細やかに描かれていて素晴らしく、引用させてもらうと、「・・・この気持ちは誰にも言いたくなかった。自分の感情は何か特別な、心の中にある柔らかなもので、白日の下にさらすにはあまりにも繊細だった。」とか、こんなふうに気持ちを表現できる作者は流石だと思いました。  ヒーローの帰還によって、1作目から続いていた戦争の裏切り者の捜索も進展し、終盤はヒロインも巻き込んでハラハラドキドキの展開でした。傷ついた軍人のヒーローと彼を癒す優しいヒロインのロマンスがとても素敵で、シリーズ4作の中で一番面白かったです。