L0VE DRUNK

ロマンス小説の感想

少女たちは闇に閉ざされ スーザン・ブロックマン

少女たちは闇に閉ざされ 上 (ヴィレッジブックス) 少女たちは闇に閉ざされ 下 (ヴィレッジブックス) Born to Darkness (Fighting Destiny)

 

S・ブロックマンの最新シリーズは近未来SF。  Troubleshooterシリーズの続きを先に出してほしかったけど、この新作もなかなか面白かったです。ヒーローは正義のために行動して軍隊をクビになり、要注意人物にされてしまった元海軍SEAL隊員。(やはりこの作者はSEALが好きよね。)この小説では未来のアメリカは、良心を失った酷い国になっているようで、軍隊や警察にも腐敗が及んでいて、(そのような未来を想像して危惧している人は多いと思いますが・・・。現状を考えると、将来的に戦争がビジネス化して、軍隊よりも民間の軍事企業が幅をきかせるような状態になることは有り得ると思うし。)そんな世界で、邪悪な麻薬製造組織と戦う超能力集団を描いたSFアクション映画のようなストーリーです。とは言え本格的なSFではなくロマンス小説なので、超能力者のヒロインが相手を魅了して自分を求めさせる力を持っているとか、彼女の同僚の男性が、超能力の鍛錬のため禁欲していて性的なエネルギーを溜め込んでいたり、はたまた、超能力者は性行為によってその能力を向上させることが出来る(?!)とか、いかにもな設定がてんこ盛りで、ロマンスに性行為が密接に絡んでいるから、登場人物たちも激しく体で愛を伝え合うというわけです。  主役の2人の他にも2組のカップルのロマンスが描かれていますが、興味深いキャラクターばかりでとても面白いです。ヒロインは自分の特殊な能力のため誰からも本当の愛は得られないと思っているので、ヒーローに対してもツンケンしていますが、そのかわり、ヒロインの同僚のゲイのカップルがとにかく熱々ラブラブで微笑ましいです。チームのリーダーの男性は、過去に愛する女性を亡くし長い間孤独でいたため、せっかく愛を感じる女性と出会ったのに今一歩踏み出せずにいてもどかしく、三者三様の恋愛模様に目が離せません。中でもやはり、自分の信念に従ってどんな時も正しいことをしようとする元海軍士官のヒーローはとても素敵でヒロインでなくても惚れてしまいます。腐敗した世の中での真の英雄、最後のボーイスカウトのような彼は、典型的なアメリカの理想のヒーロー像で、正義のためには自分の身も顧みないその行動が(ハリウッド映画的なベタな展開ではあるけれど)感動を誘います。  超能力者たちにはそれぞれ色々な能力がありますが、わかり易く書かれていて読みやすく、SFが特別好きではない私でも話に引き込まれました。難解ではなく、かといって単純すぎて馬鹿らしいということもなく、アクションとロマンスが上手く絡み合ったストーリーは、人気作家だけあって流石だと思いました。

 

<どうでもいいこと> 翻訳本を読んでいて、"真実の時"とか"真実の瞬間"という訳がでてくる時は、やや意味不明な文章になっていることが多い。たぶん"moment of truth"のことだと思うけど、これは英語ではよく使う表現で、"正念場"とか"決定的瞬間"という意味だから、"真実のとき"という訳はちょっと違うんじゃないかと思う。