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ロマンス小説の感想

海賊王と秘密の楽園 サブリナ・ジェフリーズ

海賊王と秘密の楽園 (ラベンダーブックス) The Pirate Lord (The Lord Trilogy Book 1) (English Edition)

 

Lord Trilogy 1作目。   海賊王のヒーローと、改革主義者で女囚運搬船に女教師として乗り込んだヒロインの波瀾万丈のロマンス、みたいなあらすじで、あまり好みのストーリーではなさそうだと思いながらも、S・ジェフリーズはお気に入りの作家なので読んでみたら、面白い!この作者の'98年のデビュー作だそうですが、最近の作品と変わらない作風でした。海賊が主人公のロマンスはよくありますが、今作は一風変わった設定の突飛なストーリーで意表を突かれました。気の毒な女囚たちと海賊業から足を洗いたい海賊たちに"秘密の楽園"が関わる結構壮大な話なのですが、盛りだくさんな内容をうまく端折って、ロマンス主体のストーリーに読みやすくまとめてあり、作者の力量を感じました。  いつもながらキャラクターが活き活きとしていて良かったです。海賊のヒーローは危険な雰囲気をまとっていながら、この作者の描くヒーローらしく、ちょっとヘタレな傷つきやすいところもあって、そのギャップが魅力だと思います。英国貴族の女性を毛嫌いしているのにヒロインに惚れてしまい、葛藤しながらも彼女を手に入れようと一生懸命なところが微笑ましいです。ヒロインには弱くて、いつも彼女に振り回されていますが、海賊らしく強引に迫る時にはドキドキしました。ラブシーンでも、彼女を自分のものにしたくてたまらないという必死さが滲み出ていました。  ヒロインはお転婆だけど好感の持てるタイプで、ロマンス小説に多いなんちゃってフェミニストではなく、かなり本気の改革主義者で、女囚運搬船に乗り込むくらい一生懸命で説得力がありました。義兄の伯爵との会話も楽しく、兄妹愛が感じられて良かったです。女囚たちや海賊仲間も個性的なキャラクターが多くて、脇役のロマンスもなかなか興味深く、最後まで目が離せないストーリーでした。次作は、今作でもかなりの存在感を放っていたヒロインの義兄が主役らしいので楽しみです。