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ロマンス小説の感想

偽りの祝福は公爵のあやまち ロレイン・ヒース

偽りの祝福は公爵のあやまち (ラズベリーブックス) Waking Up With the Duke (London's Greatest Lovers Book 3) (English Edition)

 

事故で下半身が麻痺した従兄から、妻に子供を宿してほしいと頼まれるヒーロー。  先月読んだグレース・バローズの「黒い瞳に~」も、ヒーローが人妻を身籠らせる話でしたが、あれは設定からハッピーエンドが透けて見えていたし、ヒロインと夫の間に恋愛感情はなかったから、切ないながらも、これと比べたらそこまでやるせない話ではなかったように思います。今作はさらに込み入った苦しい状況で、この2人は本当に幸せになれるのだろうか!?と最後まで目が離せない展開でした。  ヒーローの従兄であるヒロインの夫はダメ男だけど悪人というわけではなく、色々と罪悪感を抱えて葛藤している部分もあって複雑なのよね。彼が冷酷な悪役だったなら話は単純だったでしょうが、そうではないところが流石L・ヒースという感じで深いです。最初、ヒロインは夫の事故のことでヒーローを責めていて、かなりツンケンしていたから、まず2人が理解し合ってロマンスが始まるまでにジリジリさせられ、その後も辛すぎる展開で本当にハラハラさせられました。この作者によくある、つれないヒロインに尽くすヒーローのパターンで、優しいヒーローが素敵でした。最初からお互いにメロメロな甘いロマンスも良いですが、こういう風に最初は敵対していた2人が理解し合って恋に落ちる展開にはドキドキさせられます。気楽なロマンスではなく胸が苦しくなるような話でしたがとても面白かったです。どうなることかと気を揉まされただけに、最後になんとか丸くおさまった時には本当にホッとしました。  魔性の女すぎる母親のせいで父親の違うスキャンダラスな3兄弟のシリーズもこれで完結で、気になっていた母親のロマンスにも決着がつき納得のエンディングでした。親の愛を得られなかった上に貧乏で孤独な長男、母親に溺愛され、ちょっぴり甘ちゃんの次男、そして若くして公爵になった責任感の強い末弟と、それぞれ特徴ある3人のキャラクターがよく描き分けられていたシリーズでした。(兄弟もののシリーズって、ヒーローになったらみんな似たようなキャラクターになってしまうことも多いから・・・。)L・ヒースは実力のある作家さんなので、翻訳されてないシリーズをこれからもどんどん刊行してほしいです。